ことばの発達を促進するためには、その基礎になる発達を伸ばしていくことが大切です。
「りんご」ということばを例に考えてみましょう。

脳と神経系の発達

人間の脳は、さまざまな刺激を受けることによって発達していきます。脳の神経回路はこれらの刺激に反応して、その機能を整えていく柔軟な性質(可塑性)をもっています。可塑性は、年齢の若いときに著しく、この時期に適切な刺激を受けることが脳の発達には重要です。

感覚

話しことばは、音声で表現されるため、「りんご」ということばを聞く聴覚機能の発達が不可欠です。でも、ただ、「りんご」ということばを繰り返し聞くだけでは、何のことかわかりません。実際に、りんごを見て「色や形」がわかる、触って「つるつるした感触や丸い形」を感じる、においを嗅ぐ、食べて「ちょっと甘くて酸っぱくておいしい」を味わうなど、感覚をとおして体験することが「りんご」とは何か、ことばの意味(概念)を知ることにつながります。

運動機能

“リンゴ” と、声を出して、ことばを話すためには、発声発語に必要な運動機能の発達が必要です。生まれたばかりの赤ちゃんは、原始反射による一体的な運動で、ミルクを飲むことができます。その後、離乳食から普通食に進んで、そしゃく機能が向上することが、おしゃべりに必要な運動機能の発達の準備になるわけです。

認知

「りんご」ということばの意味がわかるためには、その音声が表している「意味」「概念」を知る(認知する)ことが必要です。見たり、触ったり、味わったりする体験をとおして、「りんご」がどんなものか知っていきます。でも、「りんご」といっても、赤いりんごもあるし、黄色いりんごもありますね。品種によって、味も違います。ちょとずつ違うけれど、共通点のある「りんご」という1つのカテゴリーに属するものとして、「りんご」の概念を認知します。この「りんご」の概念を “リンゴ” という音声で表現するのが「ことば」です。

社会性

子どもが “リンゴ” と言ったとき、何を伝えようとしているんでしょうか。「りんごが食べたい」「りんごがあったね」「りんごの絵を描いたよ」「これは、りんご?」など、場面や状況によって、さまざまです。「りんご」ということばの意味がわかって、話すことができるようになっても、コミュニケーションの手段として使うためには、人とかかわって、コミュニケーションしようとする意欲や能力が必要です。人とのやりとりによって基本的な人への信頼関係が形成されることが、表情や発声や身振りやことばなど、さまざまな伝達手段を使ってコミュニケーションする力の土台になります。