自己紹介が、通勤と忘れ物歴になってしまいました。困りごとを抱えた当事者として、「ことばの相談室」で、どんなことをするのか考えてみたいと思います。
1.困りごとの背景を知る:子どもを理解する
たとえば、忘れ物が多いという困りごとの背景にあるものは、お子さんによって違います。夜遅くまで起きていて日中は眠くなってしまう子もいるかもしれません。発達がゆっくりしていて持ち物の管理が難しかったり、不注意だったり、落ち着きのない子もいます。
私の場合は、何か興味のあることに気を取られると他のことを忘れてしまう、荷物がたくさんあると注意を分散させることが難しいなど、背景に注意力の問題がありそうです。
相談室では、ご家族から日常生活の様子をお聞きしたり、一緒に遊んで行動観察をしたり、言語発達検査をしたりして、アセスメント(評価)をします。まず、発達段階や発達・行動の特徴を知って、お子さんを理解することが、子育てと発達支援につながります。得意なことを見つけて伸ばし、弱いところを補って困らないようにするにはどうしたらよいか、手だてを考えることができるからです。
2.子どもに合わせた支援を考える
環境を整えて成功体験を積む
中学生の私は、注意を分散させることの苦手さを補うために、荷物を1つにまとめるといいのではないかと考えたのだと思います。大人になって、忘れ物をしないために、職場の近くに住んでいたわけではありませんが、結果的に一種の環境調整をしていたと言えるかもしれません。
位置検索のように、簡単に探すことのできる技術やシステムの開発も、支援の1つになるでしょう。
お子さんの場合は、ご家族や先生が環境を整えてあげると、困りごとを少なくすることができます。たとえば、生活のリズムを整える、持ち物のリストを作ってチェックできるようにする、プリントを入れるファイルを準備するなどです。
お子さんに合わせて環境を整えることで、成功体験を積み、本来持っている力を最大限発揮して、伸ばすことができるようにしたいものです。
対応できる力を身につける
荷物を1つにまとめても、それを忘れてしまうことがあります。大事なものがすべて入っているので、被害は甚大です。そんなときに、交番に届けたり、心当たりのある場所を探して連絡するなど、対応する知識や行動を身につけることが必要になります。お子さんの場合には、信頼できる身近な人に、助けを求める力をつけることが重要な対応策になると考えられます。
かかわり方に配慮する
忘れ物をするたびに、叱ることは、効果がないばかりか、ただでさえ、失敗感をもつ子どもの自己評価を低下させて、自信のない子どもに育ててしまうかもしれません。忘れ物をしたときに叱るのではなく、環境を整えることで忘れ物をしなくてすんだとき、忘れ物をしても困らないで行動できたときに、しっかり褒めてあげたいと思います。
楽しく学ぶ、コミュニケーションを楽しむ場面や活動を見つける
「好きな遊びは何ですか?」初めてお子さんにお会いした時に、必ずお聞きする質問です。
楽しいことは、その人によって違います。お子さんが好きなことは何か、何をしているときに楽しいのか、見つけることから始めたいと思います。人は楽しいときに、自分から新しいことを学ぼうとします。さらに、それを人に伝えたい、楽しさを共有したい、というコミュニケーションの楽しさを分かち合いたいと思います。
今回は、「忘れ物が多い」をテーマに、一人ひとりのお子さんの理解と発達支援について考えてみました。これから、ことばとコミュニケーションの発達や読み書きなどについて、考えていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。