文字が読めるようになるために必要な発達に沿って、支援の方法について考えてみましょう。

1.音韻知覚の発達

2.言語発達

・読むことが苦手な子ども(発達性ディスレクシア)は、話しことばの発達には問題がありません。

聴いて理解する力を活用することが支援のポイントの1つになります。

・読み聞かせや、図・写真・動画など視聴覚情報を活用しましょう。

・パソコンやタブレットなどの機器や読み上げ機能などを活用することも有効な支援です。

子どもの知的好奇心や理解力に見合った情報収集と知識の習得ができるようにすることが大切です。

3.音韻意識の発達

・日本語の音韻の単位は、拍:モーラ(以下、モーラ)です。

・4歳後半頃になると、①単語がいくつのモーラからできているか、②それぞれのモーラがどんな音か、わかるようになってきます。

たとえば、リンゴはリ・ン・ゴの3モーラ、初めの音はリ、真ん中の音はン、最後の音はゴ、とわかると、音韻を操作する遊びを楽しむことができるようになります。

・昔からあることば遊びは、音韻意識の発達を促して、文字学習の基礎になる力を伸ばすことができます。

階段じゃんけん:じゃんけんをして、グーで勝つと、グ・リ・コと、3モーラ分、3歩進むことができます。

しりとり:単語の最後の音を取り出して、その音から始まる単語を考えます。

「リンゴ」→ゴリラ→「ラッパ」

かるた:初め音を聴き取って、その札を取ります。

「ありがとう みんなの みかた あんぱんまん」→「あ」

ことばあつめ

「初めに、アのつくことばは?」→「あり」、「あめ」、「アイスクリーム」

さかさことば

「ゴンリ」を逆さから言うと?→「りんご」

4.視覚認知の発達

・物を見るときの視機能につまずきがあると、文字を見つめたり、視線をすばやく移動させたりする眼球運動の機能がうまく働かず、文章を読むときに、文字や行をとばしてしまうことがあります。

定規や厚紙を使って、読んでいる文に集中しやすいようにします。

・視覚情報処理機能が弱いと、鏡文字や、似た形の文字を見分けることが難しいことがあります。

・感覚の偏りから、文字がぼやけたり、ゆがんで見えたりすることがあります。

読みやすい紙の色や文字のフォントをみつけると、見やすくなる場合があります。

・文章の中でことばのまとまりを捉えることが難しいことがあります。

文章をわかち書きにしたり、ことばのまとまりに印をつけるなど、ことばのまとまりを捉えやすいように工夫します。

子どもの弱い機能や見え方を評価したうえで、視機能や視覚情報処理能力を高める、ビジョン・トレーニングや、認知機能強化トレーニングなどが提案されています。

5.文字・音変換(ディコーディング)の習得

日本語では、仮名文字の読みの学習から始めることが一般的です。

ひらがな

・清音:あ→/a/のように、1文字が1モーラの音に対応しているため、文字・音変換が規則的です。

キーワード法:単語の意味情報を活用すると学習しやすくなります。

り→「りんご」の「り」

・濁音・半濁音:1文字が1モーラの音に対応しているが、同じ文字に記号を付けて、異なる音を表します。

「ば」「ぱ」

・特殊音節:文字と音が一対一に対応しないため、音韻の操作が困難な子どもにとって、習得が難しいです。

「きゃ」→/kja/ 1モーラの音を2文字で表記します。

対応のルールを明確にする学習方法が提案されています。

・助詞:助詞として用いるときには、同じ文字が異なる読み方になります。

「は」→通常/ha/と読むが、助詞は/wa/と読みます。

カタカナ

・ひらがなに対応する仮名文字です。学校における学習時間が短期間であること、ソ・ン・ツ・シなど形の似た文字があることなどから、学習を補うことが必要な場合があります。

・通常、カタカナ表記をする単語についての知識も必要になります。

漢字

・漢字は、形自体に意味をもつ表意文字です。

・文字数が多い、音読み・訓読みなど複数の読み方がある、漢字を組み合わせて熟語をつくることができる、抽象的な意味を表すことが多いなど、学習の難しさがあります。

・いっぽうで、文章を読むときには、仮名文字だけの文章よりも、漢字が混じっているほうが、ことばのまとまりが捉えやすくなって、読みやすくなります。

6.ワーキングメモリの発達

・ワーキングメモリは、必要な情報を一時的に記憶し、処理をする脳の機能です。

・情報を言語的に覚えたり、視空間的に覚えたりします。

・どちらかが得意(強い)だったり、不得意(弱い)だったりすることがあります。

子どものワーキングメモリの特徴を知って、その子に合った支援の方法を工夫します。