初回相談では、まず、ご心配なことや、お困りごとはどんなことか、伺います。

次に、日常生活の様子をお聞きしたり、一緒に遊んで行動観察したり、言語発達検査をしたり、情報を収集してアセスメント(評価)をします。評価は、お子さんの発達状況や特徴を知って、お子さんを理解するためです。理解することができると、お子さんに合った、ことばを育てる方法を考えることができます。ことばを育てるには、特別な訓練をするというより、生活や遊びの中で、安心して、本来の力を伸ばしていけるように、環境を整えたり、かかわり方を工夫したりすることが大切です。

「私の言うことは、わかるのに、ことばが出ないんです。」という「ことばの遅れ」が心配なお子さんの場合を考えてみましょう。

子どもを理解し、ことばを育てる3つのポイント

① 興味・関心、好きなことを知る

② 言語発達の段階を知る

③ ことばの発達の土台になる力の発達を知る

1.興味・関心、好きなことを知る

お子さんが好きな遊びはなんですか?

同じ積み木遊びでも、高く積んでは倒すことに熱中する子もいれば、積み木を電車に見立てて走らせる遊びが好きな子もいます。一人ひとり違いますね。

その遊びの中で、お子さんは、何が楽しくて、何を感じているでしょうか。「たかーい」「ガシャーン」「もう1回やってみよう」「電車が駅に着きましたー」まだ、ことばでは、表現できなくても、表情や、身振りや、行動で表現しています。子どもの中に、感じること、思うこと、経験して知っていることがあることが、ことばとコミュニケーションの発達の第1歩になります。そばに、信頼して安心できる大人がいたら、その人の方を見て、笑顔で「おもしろいね」という気持ちを伝えるかもしれません。

大人が子どもの気持ちをわかって、ことばをかけてあげたら、もっと楽しくなります。好きな遊びや、毎日繰り返す生活の中で人とやりとりする経験がことばを育てる絶好の機会です。子どもが、自分から積極的に学ぼうとするからです。まず、お子さんが、今、何をしているのか、何を見ているのか、何を思っているのか、見ること、理解することから始めてみましょう。

2.言語発達の段階を知る

ことばの発達の順序は決まっています。

① 前言語期:意味のあることばを話す前の段階

② 初めてことばを話し語彙が増えていく時期

③ 1語文から2語文、多語文へと語をつなげていく時期

④ 助詞などを用いて、より複雑な内容をことばで表現したり考えたりする時期

⑤ 学習言語:読み書きやことばを使って新しい知識を獲得していく時期

まだ、話すことはできないけれど、ことばがわかると思うのはどんなときですか?→「ティッシュを渡して “ポイして” と言うとゴミ箱に捨ててきてくれるんです。」という、前言語期のお子さんについて考えてみます。

何を手がかりに、理解しているのか観察してみましょう。「ポイして」という言葉を理解している場合と、まだ言葉は理解できないけれど、状況を理解している場合があります。お母さんがティッシュをゴミ箱に捨てる様子を見たり、お母さんがゴミ箱のほうを見ながら渡されたときに、ゴミ箱に捨てるとほめてもらえた経験から、状況を理解して、お母さんの指示に応じているんですね。

お子さんの言語発達段階に合わせて働きかけることが大切です。単語の意味がわかりはじめた時期に、長い文章で話しかけても、単なる雑音になってしまいます。

そのとき鍵になるのは、ことばを理解と表現に分けて考えることです。事例のお子さんは、「ポイする」と言うことばの理解はまだできていませんが、状況とお母さんの意図を理解している段階です。ことばで話す練習をさせるのでなく、まず「ポイする」ということばの意味を理解できるように働きかけることから始めます。指示に応じてくれたときに「ポイしたね」とことばかけをして、しっかり褒めてあげましょう。自分の行動が「ポイする」ということばで表現されることを理解して、やがて「ポイ」と言いながらティッシュをゴミ箱に入れるようになるでしょう。

3.ことばの発達の土台になる力の発達を知る

① 感覚:聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚など。とくに、音声で表現されることばを理解するために必要な聞こえに問題がないかを確認します。

② 運動:声を出したり、話すために必要な、口唇や舌などの運動する力

 赤ちゃんの時に喃語がみられたか、いろいろな種類の発声がみられるか、食べ物をしっかり噛んで食べたり、飲んだりできるかなどを見ます。

③ 認知:物事を理解する力

 積み木を積んだり、並べたり、家やトンネルと同じ形を作ったりできるかなどを見ます。

④ 社会性:人とかかわる、コミュニケーションする力

 積み木倒し遊びに、一人で熱中しているのか、そばにいる大人の方を見て「おもしろいね」という気持ちを伝えようとするかを見ます。

これらの発達の基礎には、脳や神経系の発達があります。4つの力がバランスよく発達しているか、全体的にゆっくりしているか、ある力が強かったり弱かったり偏りがあるかなど、お子さんの発達全体を知ることが、どんな側面にはたらきかけて、ことばを育てていくか考えるうえで大切です。強い・得意な側面を活かして、弱い・苦手な側面を伸ばす工夫をしましょう。

どんな場面で、どんなふうにことばを育てていくか、お子さんの興味・関心、発達段階やことばの発達の基礎になる力の発達状況に合わせて考えていくことが個別プログラムです。絵カードやミニチュアを使って買い物ごっこをしたり、お子さんが興味があって楽しめる活動の中で、ことばやことばの土台になる力を伸ばしていきます。

遊びや日常生活経験がことばの発達とどのように関連するか、お子さんと、どんなふうに関わったら、ことばを育てていくことができるか考えていきたいと思います。